「広報」と聞いても、宣伝と何が違うの?とか、プレスリリースを出してメディアに取り上げられることでしょ?とか、最近はSNSもだよね!といった、ぼやっとしているイメージがあると思います。
広報に関する書籍や、マーケティングや経営の本を眺めてみると、それぞれがそれぞれの定義を紹介していたり、イマイチピンとこない・・・なんて方もいるのでは。
今回は、そんな「広報」の定義についてご紹介します。
日本広報学会と広報のバイブルにおける「広報」の定義
広報の定義については、2023年6月に日本広報学会の「新たな広報概念の定義プロジェクト」から広報の定義が発表されたのでご紹介します。
組織や個人が、目的達成や課題解決のために、多様なステークホルダーとの双方向コミュニケーションによって、社会的に望ましい関係を構築・維持する経営機能である。
日本広報学会 広報の定義と解説より
とあります。
今後出版される広報の書籍にはこの定義が引用されていくと思います。
ここで取り組んでみたいのが、日本広報学会の定義に書かれている言葉を掘り下げてみることです。「組織や個人」とか「多様なステークホルダー」、「双方向コミュニケーション」という言葉それぞれに広報を学ぶ基礎的な要素が隠れており、これらを解説している書籍が多数出版されています。
また、この定義では混同しやすい「広報」「パブリック・リレーションズ」「コーポレート・コミュニケーション」という言葉をそれぞれ同じものと捉えるとあります。
広報=パブリックリレーションズと理解しつつ、次の定義を見てみましょう。
アメリカで出版され広報のバイブルと呼ばれている書籍「体系パブリックリレーションズ(EffectivePublicRelations)」では以下のように定義しています。
パブリックリレーションズとは、組織体とその存続を左右するパブリックとの間に、相互に利益をもたらす関係性を構築し、維持する機能である。
体系パブリックリレーションズ ピアソンエデュケーション
以上2つの定義を見比べてみると
「自分(や自分の企業・組織)が関係者といい関係を作って維持すること」
といったことが広報の定義のような気がしてきます。
以上のことを踏まえて考えると「プレスリリースを作ってメディアに取り上げられることが関係者といい関係を作ることに繋がるのか」とか「宣伝やマーケティングとどう違うのか?」といった疑問が出てくるのではないでしょうか。
広報と混同されがちな言葉と比較
広報におけるプレスリリースの出し方やメディアに取り上げられることについてはまた日を改めてご紹介します。
今回は、混同しやすい言葉と「広報」を比較してみようと思います。
・マーケティング(Marketing)→ニーズに応えて利益を上げること(コトラー)
広報が売り上げないし利益につながらなければ、利益を追い求める企業が広報に取り組む必要はなさそうです。
しかし、モノやサービスを販売するためには顧客といい関係を作らなければならず、「関係を構築する」のは広報であると言えます。
また、行政や非営利団体でも関係者と「いい関係を構築する」必要があります。
営利団体だけでなく、非営利団体でも広報が必要であり、広報に取り組んでいる団体も多いのです。
・宣伝(Propaganda)→一定の目標のもとに、世論を操作し、その判断や行為を特定の方向に誘導する
「プロパガンダ」と聞くと政治家が大衆を扇動するような怖いイメージがあるのではないでしょうか。
宣伝を英訳するとプロパガンダ(他の訳もありますが)と訳し、世の中を操作するという意味合いがあります。
近年語られる広報においては、こちらから一方的に世の中を操作しようとすることより、双方向のコミュニケーションによる関係作りを重視しているように思います。
近年では、一般的には宣伝というと企業などが行う商業宣伝が使われるので、宣伝=プロパガンダと考えるのはやや古い考え方かもしれません。
・広告(Advertising)→費用を払って、広告枠を購入する
広報と最も混同したり同一視されている言葉が「広告」ではないでしょうか。
基本的には広報活動の実務では広告枠を買うよりも、ニュースや通常の番組・記事でメディアに取り上げられるための施策を実施することが多いです。
まとめ
以上のように広報とそれに近そう・混同しそうな言葉を比較するとそれぞれに違いがあります。
それぞれの違いを踏まえ、宣伝部・広報部・マーケティング部といったような違う部署が作られることもあります。
鹿児島のような地方では企業・団体の規模的にそういった組織作りができず、1つの部署で広報や広告をまとめて担うことが多いのではないかと思います。
しかし、そのような場合でもそれぞれの言葉の意味・定義を理解することで、実施する施策の意味合いがよりわかりやすくなるのではないでしょうか。
さらに、実務的には以上でご紹介したような言葉が混同しつつ実務を進めるケースもあるかと思います。
まずは、自社やご自分の中で「広報」をどう捉えていくかを考えてみましょう。