私たちは日々、情報過多の時代に生きています。スマートフォンを開けば、瞬時に世界中のニュースが飛び込んできますし、SNSでは友人の近況から、趣味の専門情報まで、ありとあらゆる情報が流れてきます。この情報の海の中で、せっかく発信された公式情報がなぜ「少なすぎる」と感じられてしまうのでしょうか。
最も大きな原因の一つは、情報の「5W1H」(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように)といった基本的なものが欠落しているケースが非常に多いという点です。例えば、とあるイベントの告知があったとします。
- When(いつ): 「〇月△日開催」とだけ書かれていて、具体的に何時から何時までなのか、悪天候の場合の順延や中止の判断はいつ、どこで発表されるのか、といった詳細が不明瞭だと、参加者はスケジュールを立てにくくなります。また、募集期間が明記されていなければ、そもそも「今から申し込めるのか、もう締め切ってしまったのか」すら判断できません。
- Where(どこで): 「〇〇公園で開催」とだけあっても、公園内の具体的にどの場所なのか、最寄りの公共交通機関からのアクセス方法、駐車場はあるのか、バリアフリー対応はどうかといった情報がなければ、初めて訪れる人にとっては敷居が高く感じられます。地図リンク一つあるだけで、参加へのハードルはぐっと下がります。
- Who(誰が): 「〇〇実行委員会」とあっても、具体的にどの部署が担当しているのか、問い合わせ窓口はどこか、参加する団体や協力企業はどのような組織なのかといった情報がないと、信頼性が低く感じられたり、不明点があった際にどこに連絡すれば良いのか分からず、結局諦めてしまうことにもつながります。
- What(何を): 「親子向けイベント」とだけあっても、具体的にどのようなプログラムが用意されているのか、対象年齢はどのくらいなのか、持ち物は何が必要なのかといった情報がなければ、参加するかどうかの判断材料に乏しくなります。「ただの遊び場提供なのか、何か学びがあるのか」といった内容の具体的なイメージが湧かないため、関心は薄れてしまいます。
- Why(なぜ): 「地域活性化のため」といった大義名分だけでは、受け取り手にとって「自分ごと」になりにくいものです。「なぜ今、このイベントが必要なのか?」「参加することで、地域に、あるいは自分自身にどんな良い影響があるのか?」といった、事業の目的や背景にあるストーリーが語られないと、共感や関心を深めるきっかけが失われてしまいます。例えば、地域の高齢者の健康増進が目的なら、「このイベントに参加することで、ご近所の方との交流が深まり、心身ともに元気になります」といった具体的なメリットを提示するべきでしょう。
- How(どのように): 「参加無料」とだけあっても、事前申し込みが必要なのか、当日参加も可能なのか、定員はあるのか、キャンセル方法はどうかなど、具体的な参加方法や手続きが不明瞭では、興味を持っても行動に移すことができません。また、イベントであれば「動きやすい服装でお越しください」「水分補給を忘れずに」といった、参加者が円滑に活動するためのアドバイスも重要です。
これらの情報が欠けていると、受け取る側は「これはどういう情報なのか、なぜ良いのか、誰のためになるのか、なんのための情報なのか、誰のための情報なのか」を理解できません。結果として、数行で簡単に紹介された情報は、ただの羅羅列となり、記憶に残ることなく、スクロールによって流れていくだけです。これは、情報発信側にとって「機会損失」以外の何物でもありません。せっかく時間と労力をかけて生み出した情報が、誰にも届かず、活用されないまま埋もれていくのは、非常にもったいないことです。
見られない情報に価値は少ない:「情報のインフラ」としての役割を放棄していないか?
残念ながら、情報量が少なすぎる公式情報は「まず見られない」のが現実です。人は、自分にとって価値があると感じる情報、つまり「自分に関係がある」「役に立つ」「面白い」といった要素がないと、その情報に時間を割こうとはしません。不十分な情報は、受け取り手に「なぜこれを知る必要があるのか」という動機付けを与えられず、結果として情報の存在自体が認識されないという最悪の事態を招きます。
公式情報、特に自治体や公共機関から発信される情報は、市民生活を支える「情報のインフラ」としての役割を担っています。水道や電気と同じように、必要な情報が必要な時に、必要な形で提供されるべきものです。情報が不足しているということは、このインフラが十分に機能していない状態であり、市民サービスが滞っているとも言えるでしょう。
改善策:最低限これだけは!情報発信の「黄金比」と「物語性」
では、どのようにすれば、最低限の情報で効果的な広報PRができるのでしょうか。それは、単に情報を羅列するのではなく、「受け取る側の目線」に立ち、「知りたい情報」を明確に提示し、さらに「物語性」を持たせることです。以下の3つの視点を意識し、それぞれの情報を充実させることで、情報に「血肉」を与え、受け取り手のアクションを促しましょう。
1. 5W1Hの「明確化と深掘り」:情報を立体的に構築する
ご指摘の5W1Hは、まさに情報の骨格です。しかし、単に羅列するだけでなく、一歩踏み込んで「深掘り」することが重要です。
- When(いつ):
- 日時: 「2025年8月15日(木)10:00~16:00」のように明確に記載し、複数日にわたる場合は全日程を明記しましょう。
- 期限: 「申し込み期限:2025年8月10日(土)17:00必着」のように、具体的な締め切り時間まで示すことで、受け取り手は計画を立てやすくなります。
- 変動要因: 天候による中止や延期がある場合は、「雨天時は翌日に順延。判断は当日午前7時に公式ウェブサイトでお知らせします」といった代替情報や確認方法も添えましょう。
- Where(どこで):
- 場所名と住所: 「鹿児島市〇〇公園 野外ステージ(鹿児島市〇〇町1-2-3)」と具体的に記載します。
- アクセス方法: 「JR鹿児島中央駅からバスで15分、〇〇バス停下車徒歩3分」のように、公共交通機関の利用を推奨する情報や、「駐車場20台完備(満車の場合は近隣の有料駐車場をご利用ください)」といった駐車場の情報も添えましょう。可能であれば、Googleマップなどへのリンクを貼ることで、視覚的に場所を把握しやすくなります。
- 会場内の詳細: 広い施設の場合は、「会場内の案内図はこちら」「受付は中央広場テントで行います」など、具体的な集合場所や導線を示すと親切です。
- Who(誰が):
- 主催・共催: 「主催:鹿児島市、共催:〇〇NPO法人」のように、責任の所在を明確にします。
- 担当部署・連絡先: 「担当:〇〇課 広報係、電話:099-XXX-XXXX、メール:info@kagoshima.jp」と、問い合わせ先を複数用意し、気軽に連絡できるよう配慮しましょう。
- 関係者紹介: 「イベントゲスト:〇〇(地元出身のシンガーソングライター)」や、「講師:〇〇(〇〇大学教授、専門分野:△△)」など、関わる人物の簡単なプロフィールや実績を添えることで、イベントや情報に厚みと信頼性が増します。
- What(何を):
- イベント・事業の概要: 「地域の子どもたちを対象とした環境学習イベント」のように、一言で内容がわかるキャッチフレーズを入れましょう。
- 具体的な内容・プログラム: 「午前中は〇〇先生による講演会、午後は廃材を使った工作体験、最後に〇〇(地元のキャラクター)との写真撮影会」のように、時間軸に沿った具体的なプログラム内容を記述します。参加者が「当日何をするのか」をイメージできるように、詳細な情報を提供することが重要です。
- 対象者・参加条件: 「小学生とその保護者(保護者同伴必須)」や「鹿児島県内在住の18歳以上の方」など、誰が参加できるのか、どんな条件があるのかを明記します。
- 費用: 「参加無料」だけでなく、「一部有料コンテンツあり(〇〇円)」や「材料費:〇〇円別途」など、かかる費用を明確にしましょう。
- Why(なぜ):
- 目的・背景: 「地球温暖化問題への意識向上と、子どもたちの創造力育成を目的としています」のように、なぜこのイベントや事業を行うのかを明確に伝えます。
- 開催への想い: 担当者の個人的なメッセージや、イベントにかける情熱を短い言葉で添えることで、人間味あふれる情報となり、共感を呼びやすくなります。「私たち職員一同、子どもたちの笑顔のために、このイベントを企画しました」といった一文があるだけでも印象は変わります。
- 社会的な意義: その活動が地域や社会全体にどのような好影響をもたらすのかを具体的に示すことで、情報の価値を高めることができます。「このイベントを通じて、地域全体で環境問題を考えるきっかけになれば幸いです」など、大局的な視点も加えると良いでしょう。
- How(どのように):
- 申し込み方法: 「事前申し込み制(電話、FAX、ウェブフォームより受付)」のように、複数の申し込み方法を提示し、利便性を高めましょう。
- 必要な持ち物・準備: 「筆記用具、上履き、飲み物、タオルをご持参ください」のように、当日必要なものや、事前に準備しておくべきことを具体的に示します。
- 注意事項: 「会場内での飲食はご遠慮ください」「イベント中の写真撮影は禁止です」など、円滑な運営のためのルールやマナーも忘れずに記載します。
- よくある質問(FAQ): 想定される質問とその回答をQ&A形式でまとめておくと、問い合わせ件数の削減にもつながります。
2. 「ベネフィット」の明示:受け取り手の「知りたい」に応える
人々が情報を求めるのは、多くの場合、自分にとって何かしらの「利益」があるからです。これは金銭的なものだけでなく、知識、体験、感動、共感なども含まれます。
- 誰のための情報なのか?(ターゲットの明確化):
- 情報を受け取ってほしい特定の層を明確にし、その人たちが「これは自分のための情報だ」と直感的に思えるような言葉遣いを心がけましょう。例えば、「子育て中のパパ・ママ必見!」や「地域活性化に関心のある方へ」といった具体的なメッセージです。
- ターゲット層が抱える課題やニーズに寄り添い、その解決策として情報を提供することで、情報の価値は飛躍的に高まります。
- この情報によって何が得られるのか?(具体的なメリット提示):
- 単に「楽しいイベントです」ではなく、「このイベントに参加すれば、お子さんの新しい才能が見つかるかもしれません!」「地元野菜の魅力を再発見し、食卓が豊かになります」「専門家から最新の防災知識を学び、家族の安全を守る術を身につけられます」といったように、具体的なベネフィットを提示しましょう。
- 感情に訴えかける言葉も効果的です。「心温まる交流があなたを待っています」「忘れられない夏の思い出を作りませんか?」など、読み手の感情を揺さぶる言葉を選ぶことも重要です。
3. 「次へのアクション」の提示と「物語性」の付与:行動を促し、記憶に残す
情報発信の最終目的は、受け取り手に行動してもらうことです。そのためには、次に何をすれば良いのかを明確に示すだけでなく、その情報自体に「物語」を持たせることで、より深く記憶に残り、行動へとつながりやすくなります。
- 具体的な行動喚起(Call To Action – CTA):
- 「詳しくはこちらをクリック」「今すぐ参加を申し込む」「〇〇課までお電話ください」など、次に取るべき行動を、明確かつシンプルに提示しましょう。ボタンやリンクを目立たせる工夫も有効です。
- 「限定〇名様!お申し込みはお早めに!」「先着順特典あり!」といった緊急性や希少性を加えることで、行動を後押しすることも可能です。
- 導線の明確化:
- リンク切れがないか、電話番号は正しいかなど、アクセス先が確実に機能しているかを常に確認しましょう。
- 関連情報への導線も重要です。例えば、イベントの過去の様子を伝える写真や動画へのリンク、関連する事業の紹介ページなど、興味を持った人がさらに深く情報を得られるように配慮することで、「情報の回遊性」を高めることができます。
- 「物語性」の付与:
- 単なる事実の羅列ではなく、なぜこの事業が始まったのか、どんな困難を乗り越えてきたのか、関わる人々のどんな想いが込められているのかといった「物語」を語ることで、情報に深みと奥行きが生まれます。
- 例えば、イベントの企画担当者のインタビュー記事や、参加者の声を集めた動画など、「人」に焦点を当てることで、読み手は感情移入しやすくなります。
- 鹿児島の広報PRであれば、桜島の雄大さ、豊かな食文化、温かい人々の交流といった地域固有の魅力を、情報の中にさりげなく織り交ぜることで、より記憶に残る情報として定着させることができます。
鹿児島から世界へ、そして地域へ:情報が紡ぐ未来
鹿児島には、雄大な桜島、豊かな自然が育む美味しい食材、そして篤姫や西郷隆盛に代表される歴史と文化、そして何よりも温かく情熱的な人々がいます。これらの魅力が、情報の少なさによって、あるいは伝え方の工夫不足によって埋もれてしまうのは、あまりにももったいないことです。
広報PRは、ただ情報を出すだけでなく、「誰に、何を、どう伝えるか」を戦略的に考え、「物語」を紡ぐ作業です。上記の「黄金比」を意識し、受け取る側の心に響く、血の通った情報発信を実践することで、鹿児島から日本全国、ひいては世界へと、その魅力が伝播していくことを期待しています。
情報発信は一度きりではなく、継続的な改善が求められます。発信した情報への反応を分析し、より効果的な伝え方を常に模索していくことが重要です。
何か具体的な情報発信でお悩みでしたら、ぜひご相談ください。共に鹿児島の魅力的な情報を、より多くの人に届けていきましょう!
