第14章:鹿児島企業のための地域広報戦略 ― ローカルの強みを全国・世界へ


目次

はじめに ― 「鹿児島」はブランドだ

鹿児島は九州の最南端に位置し、独自の自然・文化・食・歴史を持つ「ポテンシャルの塊」のような県だ。桜島・屋久島・奄美の世界自然遺産、薩摩切子・桐島屋焼などの伝統工芸、黒牛・黒豚・本格焼酎というブランド食材、そして幕末に日本を変えた薩摩の歴史…

これらの資産を持ちながら、多くの鹿児島企業が「自社に話題がない」「鹿児島では注目されない」と感じている。本章では、鹿児島企業が持つ本来の強みを最大限に活用し、地域から全国・世界へと広報を展開するための実践的な戦略を解説する。


14-1. 鹿児島の「地域資産」を広報に活かす

鹿児島ならではの広報素材カタログ

自然・環境資産: – 桜島の降灰が育てる特殊な土壌(桜島大根・桜島みかん) – 世界自然遺産の屋久島の森と水 – 奄美の豊かなサンゴ礁と亜熱帯の自然 – 霧島の温泉と山岳の豊かな生態系

食の資産: – 黒毛和牛(黒牛)・黒豚:ブランド肉の聖地 – 本格芋焼酎:薩摩・大隅の発酵文化 – 鰹節・きびなご・黒糖:海と島の食文化 – 知覧茶・お茶文化

歴史・文化資産: – 幕末の薩摩の歴史(西郷隆盛・大久保利通・島津家) – 薩摩切子・桐島屋焼・大島紬などの伝統工芸 – 薩摩琵琶・おはら節などの芸能文化 – 鹿児島弁という独特のコミュニケーション文化

産業・技術資産: – 種子島宇宙センター(日本の宇宙産業の中心) – 豊富な再生可能エネルギー資源(地熱・太陽光・風力) – 農業・漁業・林業の多様な第一次産業

「鹿児島」という固有名詞の使い方

広報においては「鹿児島」という地名を積極的に使うことが、ブランド構築に直結する。

使い方の例: – 「鹿児島生まれ」「薩摩の○○」 – 「鹿児島でしか作れない理由」 – 「桜島を毎朝見ながら作っています」 – 「薩摩の伝統が、現代に生きる」

地名・地域ブランドは、企業単独では作れないが、「乗っかる」ことができる最強の広報ツールだ。

【図14-1】鹿児島の資産マップ ― 広報素材の宝庫

鹿児島の広報資産マップ

  【自然・環境】              【食の資産】
  桜島(活火山・降灰土壌)    黒毛和牛(黒牛)
  屋久島(世界自然遺産)  ←★→ 黒豚・鶏刺し
  奄美の海・サンゴ礁          本格焼酎(芋・麦・米)
  霧島・温泉地帯              桜島大根・桜島みかん
                              きびなご・鹿児島黒糖
           ★★★★             知覧茶
  鹿児島           ★★★★★
  ブランド ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  【歴史・文化】              【産業・技術】
  薩摩の幕末史                種子島宇宙センター
  西郷隆盛・島津家            再生可能エネルギー
  薩摩切子・大島紬  ←★→    農業・漁業・林業
  桐島屋焼                    ロケット・宇宙産業
  おはら節・薩摩琵琶

  ▶ これらの「鹿児島ブランド」と自社事業を結びつけることで
    全国・世界発信できる広報コンテンツが生まれる

14-2. 鹿児島のメディア生態系を攻略する

鹿児島主要メディアの詳細

[新聞]

メディア名特徴広報での活用ポイント
南日本新聞鹿児島の基幹紙、県内シェア最大地域経済・農業・文化・採用ニュース
読売新聞鹿児島版全国紙の鹿児島版全国展開も視野に入れた話題
朝日新聞鹿児島版全国紙の鹿児島版社会的課題・環境・文化系ネタ
日刊工業新聞鹿児島製造業・産業特化BtoB・製造業の新技術・設備投資

[テレビ]

メディア名特徴広報での活用ポイント
MBC南日本放送民放最大手、夕方ニュース影響力大生活情報・食・人物ストーリー
KYT鹿児島読売テレビ「アサデス」等の情報番組生活情報・グルメ・地域行事
KKB鹿児島放送ABC系列の情報番組生活情報・観光・地域ビジネス
KTS鹿児島テレビフジ系列の報道・情報番組ビジネス・地域ニュース
NHK鹿児島公共放送、信頼性が高い農業・産業・文化・社会問題

[デジタル]

メディア名特徴
プレスリリースかごしま鹿児島特化の広報情報プラットフォーム
kagoshima.info鹿児島の地域情報サイト
鹿児島経済新聞鹿児島のビジネスニュース専門
鹿児島市公式SNS行政の地域発信媒体との連携可能

14-3. インバウンド(訪日外国人)向け広報戦略

訪日外国人旅行者が増加する中、鹿児島を訪れる外国人観光客への広報は大きなビジネス機会だ。

多言語対応の優先順位

鹿児島を訪れる外国人の主な国籍(観光統計より): 1. 台湾・韓国(近距離のアジア) 2. 中国 3. 欧米(食・自然体験に強い関心) 4. 東南アジア(ASEAN圏)

優先する言語対応:英語(グローバル)、中国語(簡体字/繁体字)、韓国語

外国人向けプレスリリースの配信先

  • PR Newswire(英語の国際プレスリリース配信)
  • PRTIMES GLOBAL(PR TIMESの英語版)
  • Visit Japan Web パートナー登録
  • JNTO(日本政府観光局)の情報提供

14-4. 鹿児島の地域コミュニティと広報の連携

地域のコミュニティ組織との連携

組織広報での連携方法
鹿児島商工会議所共同広報・会員企業との連携・経営情報誌への掲載
鹿児島県中小企業家同友会事例発表・経営者コミュニティでの認知向上
各市町村の観光協会観光向け情報発信・インバウンド連携
JAかごしま農業関連ネタでの連携・農家との共同PR
鹿児島県産業支援センター補助金・マッチング・専門家派遣の情報発信

地域イベントを広報の「起爆剤」に使う

鹿児島には一年を通じて多数の地域イベントがある。これらに参加・協賛することで、イベント関連メディアへの露出と地域コミュニティとの関係強化を同時に実現できる。

活用できる主要イベント:

イベント時期広報機会
鹿児島おはら祭11月協賛・展示・メディア露出
桜島火の島祭り8月地域密着の情報発信
霧島国際音楽祭夏季文化・芸術との関連付け
鹿児島国際観光コンベンション観光・インバウンド向け展示
農林水産祭・大地の祭り農業・食品系企業の露出

14-5. 鹿児島から全国へ ― スケールアップの戦略

地方から全国メディアへのアプローチ

鹿児島の地元メディアへの露出実績を積み上げた後、全国メディアへのアプローチが現実的になる。

全国メディアへの切り口(鹿児島企業の例):

全国的なテーマ鹿児島企業の接点
SDGs・サステナビリティ有機農業・自然素材・地産地消の取り組み
地方創生・移住定住Iターン・Uターン採用の成功事例
和食文化の継承焼酎・発酵食品・伝統食の取り組み
宇宙産業種子島との連携・宇宙関連技術
デジタル×地方IT活用した農業・水産業のDX

ふるさと納税を広報ツールとして活用する

ふるさと納税のプラットフォームは、鹿児島の商品・食材を全国の見込み顧客に届ける最強のOwned + Paid Media的機能を持つ。

広報視点でのふるさと納税活用: 1. 商品ページに「なぜこの商品か」のストーリーを詳しく書く 2. 生産者の写真・動画を掲載する 3. ランキング上位入りを達成したら、プレスリリースに活用する

【図14-2】鹿児島から全国・世界への広報展開ステップ

PHASE 1              PHASE 2              PHASE 3
  地元確立             九州・全国展開       グローバル
  ┌─────────────┐    ┌─────────────┐    ┌─────────────┐
  │鹿児島メディア│───▶│全国Webメディア│───▶│英語メディア  │
  │南日本新聞   │    │PR TIMES配信  │    │JNTO連携      │
  │MBC・KYT等  │    │九州・全国紙  │    │インバウンド  │
  └─────────────┘    └─────────────┘    │メディア対応  │
         │                  │              └─────────────┘
         ▼                  ▼                     │
  プレスリリース      ふるさと納税          海外EC・通販
  かごしまで           ポータル掲載         展開
  地元実績構築         全国ECへの展開

  ★ まず「鹿児島での確固たる実績」が全国展開の信頼の土台になる

14-6. 鹿児島企業の広報ロードマップ ― 3年間の成長設計

1年目:基盤構築期

目標:広報の土台を整える – プレスリリースかごしまへの登録・定期配信開始 – 自社Webサイトのプレスルーム整備 – Instagram公式アカウント開設・月20投稿 – 主要メディア記者へのプレスリリース直接配信開始(月2本) – Google ビジネスプロフィールの最適化

期待成果: – 地元メディア(南日本新聞・MBC等)への掲載:年間3〜5件 – Instagram:フォロワー500〜1,000人 – Webサイト:月間UU 1,000〜3,000人

2年目:露出拡大期

目標:地元での認知と全国への足がかりを作る – プレスリリース全国配信の追加(PR TIMES等) – YouTube動画コンテンツ開始(月2本) – 地元テレビへの取材誘致(年2〜3件) – インフルエンサー連携開始 – 年間広報計画書の策定

期待成果: – 地元メディア掲載:年間6〜12件 – 全国Webメディア掲載:年間2〜3件 – Instagram:フォロワー2,000〜5,000人 – Webサイト:月間UU 5,000〜10,000人

3年目:統合展開期

目標:PESOを統合した広報システムの確立と全国展開 – 全国メディアへの継続的なアプローチ – インバウンド対応(英語メディアへの情報提供) – ブランド認知度調査の実施 – 広報担当者の専任化・チーム化 – 業界アワードの受賞狙い(グッドデザイン賞等)

期待成果: – 全国メディア掲載:年間5件以上 – Instagram:フォロワー1万人突破 – Webサイト:月間UU 3〜5万人 – 採用応募数:前年比2倍以上

【図14-3】3年間の広報KPI成長イメージ

1年目      2年目      3年目
  メディア掲載(年間)   ├──3〜5件───6〜12件──15件以上─┤
  Webサイト月間UU        ├─1,000〜────5,000〜───30,000〜 ┤
  SNSフォロワー          ├──500〜─────2,000〜──10,000〜  ┤
  採用応募数(月間)     ├───5〜──────10〜────20件以上── ┤
  プレスリリース配信     ├──月1本────月2本────月3〜4本── ┤

  ▶ 1年目:土台構築(数字より習慣化が重要)
  ▶ 2年目:露出が露出を呼ぶ「複利効果」が始まる
  ▶ 3年目:広報が「採用・営業・経営」に貢献する実感が出る

まとめ ― 本書全体の締めくくり

本書(全14章)で解説した内容をまとめると:

テーマ要点
1章広報入門広報の本質と中小企業が取り組む理由
2章PESOモデル4つのメディアを統合した広報設計
3章3C分析市場・競合・自社の広報環境把握
4章SWOT分析強み×機会で戦略オプションを導く
5章ステークホルダー分析誰と関係を築くかの優先順位設計
6章STP戦略ターゲットとポジショニングの設計
7章Paid Media補助的有料広告の戦略的活用法
8章Earned Mediaメディア掲載獲得の実践術
9章Shared MediaSNSによる共感と拡散の設計
10章Owned Media自社長期情報資産の構築
11章プレスリリース記事になる広報文書の作成技術
12章広報計画書年間PDCAで動き続ける広報の設計
13章効果測定KPIで成果を見える化し改善し続ける
14章地域広報戦略鹿児島の強みを全国・世界へ発信する

広報は一夜にして完成するものではない。本書で学んだフレームワークと実践手法を、日々の業務の中で少しずつ試し、改善し、積み上げていくことで、確実に鹿児島企業の広報力は向上する。

プレスリリースかごしまは、皆さんの広報活動のパートナーとして、情報発信の場所を提供し続ける。今日から、一歩踏み出そう。


本記事は「プレスリリースかごしま」広報ナレッジシリーズの第14章(最終章)です。


著者について

本シリーズは「プレスリリースかごしま(kagoshima.news)」が、鹿児島の企業・団体の広報力向上を支援するために制作しました。

鹿児島からの情報発信をサポートする広報支援サービスについては、プレスリリースかごしまをご覧ください。

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