はじめに ― 「思いついたら動く」広報を卒業する
多くの中小企業の広報が「思いついたらプレスリリースを出す」「話題になりそうだからSNSに投稿する」という行き当たりばったりの状態になっている。
この「リアクティブ(受動的)」な広報から脱却し、年間を通じた計画に基づく「プロアクティブ(能動的)」な広報へ移行することが、広報力を真に高めるための重要なステップだ。
本章では、年間広報計画書の構成と、PESOモデルを統合した施策カレンダーの作成方法を詳細に解説する。
12-1. 広報計画書の全体構成
標準的な広報計画書は以下の7つのセクションで構成される:
【広報計画書 構成】
1. 広報の基本方針
- ビジョン・ミッションとの連動
- 今期の広報目標
2. 環境分析サマリー
- 3C分析の結果
- SWOT分析の結果
3. ターゲット設定
- 主要ステークホルダーとSTP分析結果
4. 年間広報テーマとメッセージ
- 年間を通じた一貫したメッセージ
5. PESO別施策一覧
6. 年間スケジュール(施策カレンダー)
7. KPI・効果測定計画
【図12-1】広報計画書の構成ロードマップ
12-2. 広報目標の設定 ― SMARTの法則
「認知度を上げる」「メディアに載る」は目標ではなく「方向性」だ。本当の目標はSMARTの法則に従って設定する。
| 基準 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| Specific(具体的) | 何を達成するか明確 | 「南日本新聞への掲載」 |
| Measurable(計測可能) | 数値で測れる | 「月1回以上の掲載」 |
| Achievable(達成可能) | 現実的に達成できる | 「半年で3回掲載実績を作る」 |
| Relevant(関連性) | 経営目標と連動している | 「採用ブランディングの強化」 |
| Time-bound(期限付き) | いつまでに | 「2024年度末(2025年3月末)まで」 |
【図12-2】SMARTの法則で広報目標を設定する(記入例)
広報KPIの例
| 目標領域 | KPI例 |
|---|---|
| メディア露出 | 月間メディア掲載件数○本以上 |
| デジタル | Webサイト月間UU数○万PV、SNSフォロワー数○人 |
| プレスリリース | 月○本配信、掲載率○%以上 |
| 採用 | 採用応募者数○名/月、認知度(アンケート) |
| ブランド認知 | NPS(推奨者純増指数)スコア○以上 |
12-3. 年間広報テーマの設定
年間を通じて一貫したメッセージを発信するために、「年間広報テーマ」を設定する。
年間テーマの例: – 「鹿児島の食の未来を、私たちが作る」 – 「100年の伝統が、新しい鹿児島を育てる」 – 「地元で生まれ、世界へ広がる鹿児島の味」
このテーマは1年間すべての広報物(プレスリリース・SNS・パンフレット・取材対応)で一貫して使用することで、ステークホルダーの認識に刷り込まれていく。
季節テーマと年間テーマの連動
年間テーマを軸に、各月・各季節の自然な流れに合わせた季節テーマを設定し、タイムリーな情報発信を実現する。
12-4. PESO別年間施策計画
Paid Media年間施策
| 時期 | 施策内容 | 目的 | 予算目安 |
|---|---|---|---|
| 4月(新生活シーズン) | Instagram・Facebook広告(新商品告知) | 新顧客獲得 | 5万円 |
| 8月(お盆帰省シーズン) | Google広告(ふるさと納税・通販) | 帰省土産需要獲得 | 3万円 |
| 9月(新芋シーズン) | プレスリリースかごしま新商品配信 | メディア露出獲得 | 2万円 |
| 12月(年末ギフトシーズン) | SNS広告(ギフト商品) | ギフト需要獲得 | 8万円 |
Earned Media年間施策
| 時期 | プレスリリース・取材対応 | ターゲットメディア |
|---|---|---|
| 1月 | 年頭所感・今年の取り組み発表 | 南日本新聞・業界誌 |
| 3月 | 春の新商品・展示会出展告知 | 食品専門誌・Web |
| 6月 | 社会貢献・環境活動の中間報告 | 地域紙・自治体広報 |
| 9月 | 新芋仕込み開始・農家との取り組み | 農業メディア・地域TV |
| 11月 | 年間まとめ・受賞・実績発表 | 全国メディア |
| 12月 | 年末ギフト特集向けネタ提供 | 雑誌・Webメディア |
Shared Media年間施策
| 月 | 投稿テーマ | プラットフォーム |
|---|---|---|
| 1月 | 新年のご挨拶・今年の抱負 | 全プラットフォーム |
| 2月 | バレンタイン限定ギフト紹介 | |
| 3月 | 春の農場の様子・桜との食べ合わせ | Instagram・YouTube |
| 4月 | 新入社員紹介・職場の様子 | |
| 5月 | GW観光と体験プログラム告知 | Instagram・X |
| 6月 | 梅雨の季節に楽しむ室内レシピ | YouTube |
| 7月 | 夏の食材・薩摩の夏祭り関連 | Instagram・TikTok |
| 8月 | お盆・帰省向けお土産特集 | Instagram・X |
| 9月 | 新芋仕込みの様子(製造現場ドキュメント) | YouTube・Instagram |
| 10月 | 秋の食材・実りのシーズン | |
| 11月 | 年間受賞・実績の報告・感謝 | 全プラットフォーム |
| 12月 | 年末ギフト特集・来年への期待 | 全プラットフォーム |
Owned Media年間施策
| 月 | ブログ記事テーマ | 目的 |
|---|---|---|
| 1月 | 「今年挑戦する3つのこと」代表インタビュー | ブランドストーリー |
| 2月 | 「○○の正しい選び方」初心者ガイド | SEO・見込み客獲得 |
| 3月 | 「春の食材と○○の合わせ方」レシピ提案 | SEO・エンゲージメント |
| 4月 | 「移住して鹿児島で働いてみた」従業員インタビュー | 採用ブランディング |
| 5月 | 「GWに訪れたい鹿児島の隠れた名所」 | 観光連携・SEO |
| 6月 | 「○○の製造工程を徹底解説」 | 専門性・信頼性 |
| 7月 | 「夏に食べたい鹿児島グルメ10選」 | SEO・シーズン需要 |
| 8月 | 「農家さんのインタビュー:土と向き合う25年」 | ブランドストーリー |
| 9月 | 「今年の仕込みが始まりました」製造現場レポート | タイムリー情報 |
| 10月 | 「○○を贈り物にする完全ガイド」 | ギフト需要・SEO |
| 11月 | 「5年間の取り組みと成果報告」 | 信頼性・透明性 |
| 12月 | 「今年1年間のメディア掲載実績まとめ」 | 実績・信頼性 |
12-5. 年間カレンダー統合版(テンプレート)
【広報年間カレンダー ○年度】 月 │ Paid │ Earned │ Shared │ Owned ────┼───────────────────┼───────────────────┼───────────────────┼──────────────── 4月 │ 新商品Instagram広告 │ 春の新商品PR配信 │ 新入社員紹介投稿 │ 創業ストーリー記事 5月 │ GW集客広告 │ GWイベントPR │ 体験レポート動画 │ 観光連携記事 6月 │ ─ │ 社会貢献PR │ 農場レポート投稿 │ 製造工程解説 7月 │ 夏季商品SNS広告 │ 夏季商品新聞掲載 │ 夏グルメ投稿 │ レシピ記事 8月 │ お盆Google広告 │ 帰省土産メディア │ 帰省土産特集投稿 │ 農家インタビュー 9月 │ 秋商品PR配信 │ 新芋仕込みTV取材 │ 製造現場動画 │ 仕込みレポート 10月│ ─ │ 秋季受賞PR │ 秋食材投稿 │ ギフトガイド記事 11月│ 年末SNS広告開始 │ 年末メディア特集PR │ 実績報告投稿 │ 年間まとめ記事 12月│ ギフトシーズン広告 │ 年末ギフト特集掲載 │ 年末感謝投稿 │ 来年の展望記事 1月 │ 新年SNS広告 │ 年頭所感PR │ 新年挨拶投稿 │ 新年目標記事 2月 │ ─ │ バレンタインPR │ ギフト提案投稿 │ 初心者ガイド記事 3月 │ 年度末広告 │ 年度総括PR │ 春到来投稿 │ 来期予告記事
【図12-3】広報PDCAの年間サイクル
12-6. 広報PDCAサイクルの運用
計画(Plan)→実行(Do)→評価(Check)→改善(Act)の「PDCAサイクル」を広報活動に組み込む。
推奨レビュー頻度: – 毎週:SNS投稿のパフォーマンス確認・プレスリリースの反響確認 – 毎月:KPI進捗確認・翌月計画の微調整 – 四半期:SWOT・ターゲットの再確認・施策の大幅修正 – 年1回:年間計画全体の見直しと翌年計画の策定
まとめ ― 本章のポイント
- 広報計画書の7セクション構成で、戦略から施策まで体系的に整理する
- SMART法則でKPIを設定し、「なんとなく広報」から「成果を測る広報」へ移行する
- 年間広報テーマを設定し、すべての施策で一貫したメッセージを発信する
- PESO別×月別の施策カレンダーで、年間を通じた計画的な発信体制を構築する
- PDCAサイクルで継続的に改善し、広報力を高め続ける
次章では、実施した広報活動の効果を測定するKPIと成果の見える化を解説する。
本記事は「プレスリリースかごしま」広報ナレッジシリーズの第12章です。