皆さんは自社の商品やサービスの魅力、どうやって伝えていますか?
「広報や情報発信が大事なのは分かるけど、何から手をつければいいのか…」「お金をかけずに効果を出す方法はないかな?」そんな悩みを抱えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
情報発信をサポートする事業者も増え、広告代理店、テレビ局や新聞社などのメディア、最近は個人やグループで活動するインフルエンサーなどウェブマーケティングを専門にする人たちも増えてきて利用する企業が増えています。
特にウェブ分野においては、その時々の営業トレンドも存在するため言われるがままに外注することもあるようです。
若い方が新たにチャレンジしやすい分野でもあるため、いいこと悪いこと玉石混交といった様子を見受けます。
情報が溢れる現代において、お客様に自社の声を見つけてもらい、興味を持ってもらうためには、戦略的な情報発信が不可欠です。
そこで注目されているのが「PESO(ペソ)モデル」という考え方です。
近年、広報だけでなく、マーケティングの世界でも盛んに使われています。
参考リンク:「PESOモデル」から考えよう 広報主導のオウンドメディア(広報会議)
ちょっとしたチラシ作りから広告作りまで外注に頼りがちになる分野ですが、自社でどのような取り組みをしているかを理解するために有益な考え方じゃないかなと思います。
ぜひ知っておいてください。この記事では、広報・マーケティングのフレームワークであるPESOモデルをすぐに活用できるよう、分かりやすく解説していきます。
PESOモデルとは? 4つのメディアを理解しよう
PESOモデルとは、広報・マーケティング活動で活用するメディアを以下の4つに分類し、それらを統合的に活用することで、情報発信の効果を最大化しようという考え方です。
- Paid Media(ペイドメディア):お金を払って利用する「広告」メディア
- Earned Media(アーンドメディア):信頼や評判によって獲得する「報道・口コミ」メディア
- Shared Media(シェアードメディア):SNSなどでユーザーと共有・拡散する「共感・参加」メディア
- Owned Media(オウンドメディア):自社で所有・管理する「自社発信」メディア
これら4つの頭文字をとって「PESO」と呼ばれます。
なぜ今、PESOモデルなのでしょうか? かつてはテレビCMや新聞広告(ペイドメディア)の影響力が絶大でしたが、インターネットやSNSの普及により、情報収集の方法や消費者の購買行動は大きく変化しました。
一つのメディアに頼るのではなく、これらのメディアを有機的に組み合わせ、それぞれの強みを活かすことで、より効果的にターゲット顧客へ情報を届け、良好な関係を築くことができるのです。
各メディアの特徴と鹿児島での活用法・事例
それでは、4つのメディアそれぞれの特徴と、鹿児島での具体的な活用法や事例を見ていきましょう。
1. ペイドメディア(Paid Media):お金で買う、いわゆる”広告”
- 特徴:
- 広告費を支払うことでテレビやラジオのCMや新聞の広告枠に広告を掲載し、確実に情報を露出できる。
- ターゲット(地域、年齢、興味関心など)を絞ってアプローチできる。
- 短期間で認知度を高めたい場合に有効な場合もある。
- 掲載個所や時間帯が合わなかったり、掲出期間が短いと効果が薄い場合もある。
- 広告の内容やタイミングをコントロールしやすい。
- GoogleやYahoo広告は運用に知識が必要だったりする。
- デメリット: 広告費がかかる。広告と認識されるため、信頼性は他のメディアに劣る場合がある(広告であるという見方をされる)。
- 鹿児島での活用例:
- 新聞広告: 南日本新聞など
- テレビ・ラジオCM: MBC南日本放送、KTS鹿児島テレビ、KKB鹿児島放送、KYT鹿児島読売テレビ、μFMエフエム鹿児島など(広告代理店を通すケースも多い)
- 地域情報誌: リビング新聞、フェリアなど
- Web広告: Google広告、Yahoo!広告(地域ターゲティング)、SNS広告(Facebook, Instagramなど)、地域情報サイト(カゴシマニアックス、鹿児島よかもん再発見など)への広告掲載、地域系インフルエンサーへの掲載依頼など
- 事例:
- 霧島市の新しいカフェがオープン時、地域情報誌とInstagram広告(地域ターゲティング)を活用し、オープン当初から多くの来店客を獲得した。
- 鹿児島の特産品を扱う通販サイトが、お中元・お歳暮シーズンに合わせて南日本新聞やWeb広告を出稿し、売上を伸ばした。
2. アーンドメディア(Earned Media):信頼・ニュース性・話題性・社会性で勝ち取る”報道・口コミ”
- 特徴:
- 新聞、テレビ、雑誌、Webメディアなどに記事やニュースとして取り上げられること。または、個人のブログやSNS、口コミサイトで好意的に紹介されること。
- 第三者からの発信のため、一般的に信頼性が高い(媒体による)。
- 基本的に広告費はかからない(ただし、広報活動の労力は必要)。
- 情報が拡散されやすいこともある。
- デメリット: メディア掲載をコントロールできない。ネガティブな情報が広まるリスクもある。
- 鹿児島での獲得方法:
- プレスリリースの配信: 新商品、新サービス、イベント、地域貢献活動、受賞歴などを分かりやすくまとめ、地元の新聞社、テレビ局、Webメディア、プレスリリース配信サービス(PRTIMESやプレスリリースかごしまなど)に送付する。
- メディアリレーション: 日頃からメディア関係者と良好な関係を築いておく。鹿児島には地域を走り回っている記者さん、ディレクターさんがたくさんいらっしゃいます。
- 話題性のある取り組み: メディアが取り上げたくなるようなユニークな活動やストーリーを持つ。
- 質の高い商品・サービス: 顧客満足度を高め、自然な口コミを促す。
- 事例:
- 薩摩川内市の小さなパン屋さんが、地元の食材にこだわったパン作りと店主の人柄が地元テレビ局の番組で紹介され、県内全域から客が訪れるようになった。
- あるNPO法人が実施した環境美化活動が、継続性と地域への貢献度が評価され、複数の新聞で取り上げられた。
3. シェアードメディア(Shared Media):みんなで広げる”SNS”
- 特徴:
- Facebook, Instagram, X (旧Twitter), LINE, YouTube, TikTokなどのソーシャルメディアプラットフォーム。
- ユーザー(顧客)との直接的なコミュニケーションが可能。
- 「いいね!」や「シェア」による情報の拡散力が高い。
- ファンとの関係構築(コミュニティ形成)に有効。
- 比較的低コストで始められる。
- デメリット: 情報のコントロールが難しい。炎上リスクがある。継続的な運用が必要。
- 鹿児島での活用例:
- Instagram: 鹿児島の美しい風景、美味しそうなグルメ(#鹿児島グルメ、#鹿児島カフェ)、商品の魅力的な写真や動画を発信。ストーリーズでの日常的な情報発信やライブ配信。
- Facebook: イベント告知、地域情報の発信、顧客とのコメントを通じた交流。Facebookページやグループの活用。
- X (旧Twitter): リアルタイムな情報発信(営業時間変更、新入荷情報など)、トレンドに合わせた情報発信、顧客からの質問への迅速な回答。
- LINE公式アカウント: クーポン配布、セール情報、予約受付、顧客との個別メッセージ。
- 事例:
- 奄美大島のお土産物屋さんが、Instagramで商品の背景にあるストーリーや生産者の想いを発信し、共感を呼んでファンが増加。オンラインストアの売上にも繋がった。
- 鹿児島市内の飲食店が、LINE公式アカウントで友だち限定のお得な情報や新メニューの案内を配信し、リピーター獲得に成功している。
4. オウンドメディア(Owned Media):自分たちで育てる”自社メディア”
- 特徴:
- 自社で管理・運営するメディア。ウェブサイト、ブログ、メールマガジン、広報誌、パンフレットなど。
- 発信する情報の内容やデザイン、タイミングを自由にコントロールできる。
- 顧客にとって価値のある情報を提供し続けることで、信頼関係を築き、ファンを育成できる。
- 長期的に見ると、企業の資産となるコンテンツを蓄積できる。
- デメリット: 制作・維持・運営に手間やコストがかかる。集客(見てもらうための努力)が必要。効果が出るまでに時間がかかる場合がある。
- 鹿児島での活用例:
- 自社ウェブサイト: 会社の基本情報、商品・サービス紹介、理念や想い、お知らせなどを掲載する情報発信の基盤。ブログ機能を追加するのも有効。
- ブログ: 商品開発の裏側、専門知識、スタッフの日常、鹿児島の魅力紹介など、顧客の興味を引くコンテンツを発信する。
- メールマガジン/LINE公式: 定期的に購読者や友だちに情報を届け、関係性を維持する。
- パンフレット・広報誌: オフラインでの情報提供ツール。店舗やイベントで配布。
- 事例:
- 指宿市の旅館が、自社ウェブサイトのブログで温泉の効能や周辺の観光情報、季節ごとのイベント情報を丁寧に発信し続け、「泊まる前から旅が楽しめる」と予約率向上に貢献した。
- 鹿児島の工務店が、家づくりのノウハウや施工事例、お客様の声をウェブサイトで詳しく紹介し、専門性と信頼性をアピール。問い合わせ件数を増やした。
【各メディアの特徴比較表】
メディア種類 | 主な目的 | コスト感 | コントロール性 | 信頼性 | 情報拡散力 | 主なメディア例(鹿児島版) |
---|---|---|---|---|---|---|
ペイド (Paid) | 認知拡大、短期的な集客 | 高 | 高 | 低~中 | 中 | 新聞広告、テレビCM、ラジオCM、地域情報誌広告、Web広告、SNS広告 |
アーンド (Earned) | 信頼獲得、第三者のお墨付き | 低(労力要) | 低 | 高 | 高 | 新聞記事、テレビ番組、Webニュース、雑誌掲載、ブログ・SNSでの紹介、口コミサイトでの高評価 |
シェアード (Shared) | 共感・拡散、ファンとの交流 | 低~中 | 中 | 中 | 高 | Facebook, Instagram, X, LINE, YouTube, TikTok |
オウンド (Owned) | 関係構築、情報発信の基盤 | 中(継続要) | 高 | 中~高 | 低~中 | 自社ウェブサイト、ブログ、メールマガジン、LINE公式アカウント、パンフレット、広報誌 |
(注:コスト感や効果は、実施内容や規模によって変動します。)
まとめ:鹿児島の事業者がPESOモデルで低コスト広報を始めるには?
「4つのメディア、全部やるのは大変そう…」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。ご安心ください。最初からすべてを完璧にやる必要はありません。 特にコストを抑えたい場合は、以下のステップで始めるのがおすすめです。
ステップ1:情報発信の”基地”を作る(Owned Media)
- まずは、自社の情報をきちんと伝えられる場所を作りましょう。
- 最低限、スマートフォン対応の簡単なウェブサイト(無料または低コストのサービスを利用)や、無料のブログサービス(note、Amebaブログなど)を開設します。
- 商品・サービス紹介だけでなく、「どんな想いで作っているか」「鹿児島のここが好き」といったストーリーも発信すると、共感を呼びやすくなります。
- 2020年ごろのコロナ禍、感染者がいたと噂になった場所がSNSで話題になり、運営者からメッセージが出されましたが、店頭での案内しかなく情報が拡散しないケースがありました。「自分が伝えたいこと」を1つ以上は持つべきだと思います。
- メディアやSNSで話題になったとき、「ここに公式情報がある」場所を作っておくと便利です。
ステップ2:”つながり”を広げる(Shared Media)
- 自社の商品やターゲット顧客に合ったSNSアカウント(Instagram, Facebook, X, LINE公式アカウントなど)開設します。
- ステップ1で作ったウェブサイトやブログの更新情報を告知したり、日々のちょっとした出来事、お客様とのやり取りなどを発信したりして、フォロワーとのコミュニケーションを楽しみましょう。
- 鹿児島の関連ハッシュタグ(#鹿児島グルメ #鹿児島観光 #どんどん鹿児島 など)を効果的に使いましょう。
- 「どのSNSがいいのか」という問題がありますが、やりやすいもの1つをやってみるところから始めましょう。
ステップ3:”お墨付き”を狙う(Earned Media)
- 何か新しい取り組みを始めるとき、地域のためになる活動をしたとき、珍しい商品が入荷したときなど、「これはニュースになるかも?」と思ったら、簡単なプレスリリースを作成してみましょう。
- 地元の新聞社、テレビ局、地域情報サイト、鹿児島市役所や県庁の記者クラブなどにメールやFAXで送ってみます。(反応がなくても落ち込まない!)
- お客様に「SNSで紹介してね!」「口コミサイトに書いてね!」とお願いしてみるのも良い方法です。
ステップ4:必要に応じて”加速”させる(Paid Media)
- 特定のキャンペーンやイベントを多くの人に知らせたい時、短期間で効果を出したい時など、目的を明確にした上で、低予算から試せるWeb広告やSNS広告を活用します。
- Web・SNS広告は本格的にやろうと思うと運用代行を外注したりすることが出てくるので、まずはYoutubeや本などを見て自分でやってみることをお勧めします。外注するにしろ「頼んだ相手が何をやっているかわかる」ようになる努力はしましょう。
- 例えば、「Instagram広告で、まずは鹿児島市内に住む30代女性に絞って1日500円から試してみる」といった始め方が可能です。
大切なこと:
- 継続は力なり: 最初は反応が少なくても、諦めずに情報発信を続けることが重要です。
- 顧客目線で: 売り込みばかりではなく、お客様にとって役立つ情報、面白い情報を提供することを心がけましょう。
- 鹿児島らしさを活かす: 鹿児島の自然、文化、食、人情など、地域ならではの魅力を自社の情報発信に積極的に取り入れましょう。それが他社との差別化につながります。
- 効果測定と改善: SNSの反応(いいね!数、コメント)、ウェブサイトへのアクセス数などを定期的にチェックし、どんな情報が響いているのか分析して、発信内容を改善していきましょう。
- ネットが全てではない:ネットを使わなければならないと思い込んでいる方が非常に多いです。確かにこの時代ネットの活用はマストですが、まずはリアルコミュニケーションをしっかり考えることからはじめるのも決して無駄ではありません。
最後に
PESOモデルは、難解なマーケティング理論ではありません。
皆さんが日頃行っているかもしれない情報発信活動を整理し、より効果的に組み合わせるための「考え方の地図」です。
まずは、自社の状況に合わせて、できることから一歩ずつ始めてみませんか?
情報発信を通じて顧客との絆を深め、鹿児島の素晴らしい商品やサービスを、もっと多くの人に届けていきましょう。もうちょっと詳しく聞きたい、取り組むのを手伝って欲しい!という方がいらっしゃいましたらお気軽にご相談ください。